道正古屋古代製鉄研究所について

当社は白紙1号、2号、スウェーデン鋼のような低炭素鋼や青紙スーパー、東郷鋼のようなタングステン添加の優秀な鋼を「手打ち鍛造」によって刃物製作を行う会社である。

 材料はその他現代の玉鋼(和鉄)折り返し鍛錬や自社生産のウーツ鋼、粟田口鋼、銑鉄の卸鉄(和鉄)なども希望により使用可能です。

 当社の重要な目的は「古代製鉄の研究」もそのひとつであり、研究成果をつかって鋼を生産し、刃物製作の材料にも用います。

 刀匠技術と同じ技術を用いて「手打ち鍛造」にこだわり「世界一の刃物」を生産することを目的にする格調高い会社です。御愛顧、御支援いただければ幸いです。

「マイ包丁鍛造体験」 3時間 計3回 9時間(有料)も受付ております。お申込みはメールから連絡下さい。

 

古代製鉄研究所新築工房

道正古屋古代製鉄研究所の特徴

  • 手打ち鍛造にこだわり、鍛造中の温度管理や形づくりに細心の注意を払っている。
  • 焼入れ前には電気炉で鍛造後の刃物を、炭の粉の入った2重の箱に入れて球状化焼きなましを全例行っている。
  • 焼入れも困難な工程であるが刀と同様の土置きをして放射温度計を使って、炭素鋼は780℃を規準として、焼入れ水温も管理し、短時間加熱、引き上げ焼入れを行っている。
  • 焼戻し温度も油中で185℃45分という条件で焼入れ後ただちに行う。

※こうした完璧な製造工程を踏まえてることにより刃先のポロ欠けの全くない、研ぎやすい、研ぎ上げ後1年以上の長切れする包丁を生産している。

道正古屋古代製鉄研究所代表

代表 栁沼信久(やぎぬまのぶひさ)

『製鉄・製鋼・刃物の一貫生産のできる
スーパーハイテク中小企業の立ち上げを夢見て』

道正古屋古代製鉄研究所 代表柳沼信久 刃物に興味をもったのが小学1年生の頃に朴の木で削って作る飛行機のソリッドモデルを削るのに、切出しを買ってもらって自分で研いで使っていたのが始まりです。(ゼロ戦とか隼戦闘機とか削って組み立てていました。)刃物の鋼の良し悪しは全く分からずでしたが意外とよい切出しだったらしく、よく削れました。後日福島に赴任した33才のときに模型屋さんで買った切出しの刃がポロ欠けするのに仰天して刃物の大事さに目覚めたわけです。

 昭和37年に中学1年生のとき、父方の祖母が亡くなって片身分けのため終戦後叔父がバラバラに折って米軍に渡されなくしてあった江戸時代の名刀がバラバラのまま実家に持ち込まれたのをみて、刀身の美しさに驚愕して非常に強い印象をうけました。「刀鍛冶になりたい」と父親に言ったら「3才ぐらいから職人の訓練をしないとものにならないよ」、「食えない仕事だからやめなさい」と諭されてあきらめましたが、当時日本刀ブームで長野の宮入行平さんが人間国宝になって刀に大注目の集まった時代であったことも強い影響を残しています。現在東京の吉原義人刀匠の通いの弟子で修行中なのも故なしとはしません。

 医学部を出て25才のとき基礎医学の病理学講座に入って形態学の道に入りましたが、その頃はミクロトームメスという長さ25㎝ぐらいの断面長三角形の大きな刃物の刃を研いでパラフィンに包埋された組織の切片を厚さ3μぐらいできれいに傷なく切らねばならず、ミクロトームの鋼の硬さと靭性や研ぎの完璧さなどにあらためて目を見聞かされた経緯があります。
その頃連続切片という数100枚の切片を切らねばならず、研ぎに難渋していました。刃物の鋼と研ぎの困難さにウンウンいいながら岩崎航介さんの「刃物の見方」という本を読んで、鉄の変幻自在の変化の妙を知り、ますます刃物に興味をかきたてられた訳です。

「刃物の見方」には、たとえば「セメンタイトの球状化」という概念がありますが、刃物の刃のポロ欠けはセメンタイトというFeC₃の部分が非常に硬く線状に多角形を成形成してつながっていると、その線の部分でポロ欠けが発生する ということが分かっています。鉄のT1変態点727℃よりも少しだけ上の温度で鍛造するとこの線状のセメンタイトがバラバラにこわれて、微小粒状となりポロ欠けしない刃物となります。これをセメンタイトの球状化といいます。つまり鍛冶職の腕が刃物の性能に直結していることになり、非常に面白いと思いました。「セメンタイトの球状化」というのは熱処理によっても可能でT₁変 点直下100℃ぐらいで鋼を長時間保持してゆっくりと冷却しても達成できます。当社ではそのバリエーションとして735℃と680℃の間を変動させることを数回行ってより球状化しやすくしております。表面脱炭がおきないように炭の粉の入ったステンレス缶を2重にして密閉して刃物を詰めて球状化しております。

 昭和57年に福島市の大原総合病院に赴任すると立子山に藤安将平刀匠がいることを知り訪ねて知支となり、いろいろと情報交換したりするようになりました。

 昭和61年に”Scientific American”にShenbyらの『ダマスカス鋼』の論文が発表されたとき、刀匠の人達から大注目となり、その翻訳をたのまれたので翻訳してみてびっくりしました。「鎌倉時代の名刀の鋼のつくり方の解答はこれだ」と大興奮して、自分でダマスカス鋼の再現を昭和61年に志しました。仙台の会社と共同開発で管状真空アルゴン置換電気炉をつくり出して稼働させるまで苦節2年、やっとのことでダマスカス鋼の再現に成功しました。 枝状の大きなモミの木模様が表面にびっしりと再現している鋼の表面をみたときは本当に感激しました。最初のダマスカス鋼が出来たのが昭和63年の4月です。以来30個のダマスカス鋼をつくりましたが、著しい特色はその割面に多数の日本刀の「地景」と同じ模様が出現することです。これは図譜などでみる正宗の名刀の「地景」と瓜二つです。あわや国宝再現かと思いましたが鍛造で割れやすく、まだ「正宗」には届いておりません。今後の課題です。

 昭和50年から昭和56年まで基礎医学の研究者 昭和56年から消化器内視鏡のエキスパートになるべく研鑽を積み、同時に内科全般の経験を積んで長い臨床家としての人生をおくりましたが、平成29年にやっと勤務医のキャリアを終了して、そこから非常勤医師の人生となりました。週休4日の現在は休日にはライフワークの鋼と刃物の研究に没頭しています。
2020年には福島市郊外の丘の上に土地を確保し工房も建設できました。現在は包丁鍛冶としての実践をしております。数人のお弟子さんたちもいます。

 2020年には長年の考察の対象だった鎌倉時代の鋼のつくり方に思い至り、電気炉での実践で『粟田口派』の鋼の再現にも成功しました。

 主として古代につくられてた鋼の再現に研究の中心がありますが、同時に炭素鋼(古代製鉄はほとんどが微量の特殊元素を含有するのみの炭素鋼です)の性質の解明に焦点をあてるため鍛造の研究を行い同時に『世界一の刃物(世界一の炭素鋼の刃物)』の製造を目差しております。

どうぞ期待をもって応援していただければ幸いです。

2021年5月4日

『道正古屋古代製鉄研究所』代表 栁沼信久

刃物制作のご注文

  • 当社の刃物をぜひメールでご注文下さい
    注文が多すぎる場合はバックオーダーがたまりすぎて納期が長くなる可能性があります。
    初期は納期3週間で生産し、お届けします。
  • 包丁には木製の柄が必要であるがこれは既製品の秀れたものを使用します。たいていの場合は八角形のものが持ちやすく人気ですので水牛の先端で朴の木の八角形のものを使用します。柄と包丁の茎の部分の調整は極端な厳密さが必要です。柄の中心線と包丁の棟などの線が、3次元の3つの方向でピタリと一致しなければ包丁の使いやすさ達成することは無理なので 細心の注意を払って包丁の茎を包丁の柄の中心に収めて固定します。ご安心ください。包丁の木製鞘もありますので希望のある方は申し出ていただければ提供いたします。

※特殊な材料であるウーツ鋼や鎌倉時代の粟田口鋼での包丁の生産はよほどの希望がある方を対象に行います。ただし鋼1個あたりにかかる人件費、電気代、炭代などが膨大になりますので特別生産品となるため費用を計算すると包丁1本50万円とかの値段になってしまうと予想されます。これらの特殊材料での御注文はメールを頂ければ検討してお返事をさし上げたいと考えております。